派遣の時給交渉|メール例文と頼むタイミング

派遣の時給交渉

派遣の時給交渉は、雇い主である派遣会社の営業担当に頼みます。先に労使協定方式の「一般賃金」と自分の時給を並べると根拠を持って話せます。たとえば総合事務員・経験3年・東京なら下限の目安は時給2,031円です(厚生労働省 令和8年度の通達から当サイト計算)。

この記事でわかること

  • 派遣の時給がどう決まり、誰に頼めば動くのか
  • 自分の時給を厚生労働省の「一般賃金」と並べる手順(事務職の計算例つき)
  • 頼みどきは就業前・半年〜1年・更新前・4月のどれか
  • そのまま使えるメール例文3本と、言わないほうがいい言い方
  • 交渉しても上がらないときの次の手

参照した一次情報: 厚生労働省「令和8年度・令和9年度の一般賃金に関する局長通達」と別添1〜3/e-Gov法令検索「労働者派遣法」(いずれも2026年11月3日確認)

この記事の要点

  • 交渉の相手は派遣会社の営業担当。派遣先の上司に直接頼む形にはしない
  • 労使協定方式なら、時給は一般賃金と同等以上にする決まり
  • 協定には経験や能力が上がれば賃金が改善される決め方を入れる決まり(派遣法30条の4)
  • 同じ事務職でも、協定が使う統計で下限は数百円変わる
  • 上がらないときは、決め方の説明を求める→他社の求人と比べるの順

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「時給を上げてほしいけれど、言ったら更新されないかもしれない」。派遣で働く人が時給交渉をためらう理由は、たいていここにあります。

言い出しにくいのは、何を根拠にすればいいか分からないからです。派遣の時給には、厚生労働省が毎年示す「下限の目安」があります。それと自分の時給を並べてから話すと、お願いではなく確認として切り出せます。

目次

派遣の時給交渉は派遣会社の営業担当に頼む

派遣社員を雇っているのは派遣会社です。時給を決めるのも、変えるのも派遣会社なので、交渉は営業担当(コーディネーター)に頼みます。

派遣先の上司に直接「時給を上げてください」と頼んでも、派遣先は給料を払う立場にありません。派遣先の評価を伝えてもらうのは有効ですが、話は営業担当を通すのが近道です。

派遣の時給はどう決まるか

派遣の時給は、派遣先が派遣会社に払う「派遣料金」から出る仕組みです。派遣会社は料金から社会保険料や自社の経費・利益を引き、残りを時給として払います。

派遣の時給が決まるまでの流れ

段階誰が決めるか時給との関係
派遣料金派遣先と派遣会社の契約料金が上がらないと時給の原資が増えにくい
マージン派遣会社料金と賃金の差。社会保険料・教育訓練・利益など
時給派遣会社(労使協定などに沿って)一般賃金などの下限を守る決まり

マージン率は事業所ごとに公表されています。料金と賃金の差がどれくらいかは派遣会社のマージン率とはで、仕組みから整理しました。

協定には「経験が上がれば時給が上がる」決め方が入っている

労使協定方式の派遣会社で働く人の賃金は、会社が結んだ労使協定で決まるしくみです。この協定に入れる中身は、法律で定められています。

  • 賃金は、同じ地域で同じ仕事をする一般の労働者の平均的な賃金と同等以上(派遣法30条の4第1項第2号イ)
  • 職務の内容・成果・意欲・能力・経験などが向上したら賃金が改善される決め方(同号ロ)
  • その事項を公正に評価して賃金を決める(同項第3号)

つまり、仕事の範囲が広がった、経験年数が増えた、という事実はそのまま交渉の根拠になります。協定は働く人に周知する義務があります(同条第2項)。手元で見られない人は、営業担当に「労使協定を見たい」と伝えてください。

もう一つの方式(派遣先均等・均衡方式)では、派遣先の社員との比較で待遇が決まります。どちらの方式かの見分け方は派遣の同一労働同一賃金とはにまとめました。

自分の時給を「一般賃金」と並べる手順

労使協定方式で働いているなら、交渉の前に自分の時給が一般賃金をどれだけ上回っているかを計算しておきます。一般賃金は、厚生労働省が毎年度出す局長通達に載っている数字です。

計算式は次のとおりです(令和8年度の通達 第2の1)。

一般賃金(基本給・賞与・手当等)の計算式

要素中身出どころ
①職種別の基準値経験0年の時給換算額(賞与込み)通達の別添1または別添2
②能力・経験調整指数0年を100とした経験年数ごとの倍率通達本文(別添1・2は①×②の値が載っている)
③地域指数都道府県・ハローワーク管轄ごとの指数(全国100)通達の別添3
一般賃金①×②×③(1円未満は切り上げ)—

ここで比べる「一般の労働者」は、無期雇用でフルタイムの人です。通勤手当と退職金は別に比べます。

自分の時給と一般賃金を並べる4つの手順

  • 手順1労使協定を開く自分の職種に使っている統計(別添1か別添2)と職種名を見る
  • 手順2経験年数の列を選ぶ協定の等級表や経験年数の区分で、自分がどこに当たるか
  • 手順3地域指数を掛ける派遣先の事業所がある都道府県(またはハローワーク管轄)の指数
  • 手順4自分の時給と並べる基本給と手当の時給換算。通勤手当・退職金の前払い分は除いて比べる

図:労使協定と通達の別添を手元に置けば、自分の時給の下限を計算できる(厚生労働省 令和8年度の局長通達をもとに作成)。

事務職の計算例(令和8年度・地域別)

事務職で計算してみます。別添1の「総合事務員」と、別添2の「一般事務員」の両方を載せました。

事務職の一般賃金(時給・令和8年度の別添1〜3から当サイト計算)

経験総合事務員(別添1)東京総合事務員(別添1)大阪一般事務員(別添2)東京一般事務員(別添2)大阪
0年1,628円1,570円1,250円1,206円
1年1,853円1,787円1,423円1,372円
3年2,031円1,958円1,560円1,504円
5年2,175円2,097円1,670円1,610円

※地域指数は東京111.4・大阪107.4(別添3の都道府県別)。適用期間は2026年4月1日〜2027年3月31日です。

ほかの地域の指数は、神奈川110.1・愛知104.4・福岡96.4・北海道94.8です。自分の地域の数字を掛ければ、同じように出せます。

協定が使う統計で、下限は数百円変わる

表のとおり、同じ事務職でも、別添1と別添2で経験3年の下限に400円以上の差がある点に注意してください。通達は、職種ごとにどちらの統計を使うかを協定で決める形です。

そのため、計算は自分の派遣会社の協定に書かれた統計と職種名で行います。ネットの「派遣の時給相場」と比べるより、話がずっと具体的です。職種別の平均時給を広く見たいときは派遣の時給相場も参考にしてください。

令和9年度は総合事務員の一般賃金が上がる

令和9年度(2027年4月〜2028年3月)の通達は2026年8月28日に出ています。別添1の総合事務員は、経験3年が全国で2,040円です(令和8年度は1,823円)。

能力・経験調整指数も、3年が124.8から130.0に変わります。協定は年度ごとに新しい一般賃金で見直されるので、春の改定は時給の相談とかみ合いやすい時期です。

時給交渉のタイミング|就業前・半年・更新前・4月

時給交渉は、頼む理由が説明しやすい時期に合わせると通りやすくなります。理由がない時期に頼むと、営業担当も派遣先へ話を持っていけません。

派遣の時給交渉のタイミングと伝える理由

時期伝えやすい理由注意点
就業前(契約を結ぶ前)他社で同じ職種・地域の求人の時給が高い決まった後は動かしにくい。条件を聞くのは今
働き始めて半年〜1年仕事の範囲が広がった・経験年数が増えた協定の経験区分が変わるかを一緒に聞く
契約更新の1か月ほど前次の契約の条件として相談できる更新の連絡が来てからでは間に合わないことがある
4月の協定改定の前(2〜3月)新しい年度の一般賃金が出ている全員の見直しと個別の相談は分けて聞く
業務が増えた・資格を取った直後向上した事実がはっきりしている増えた業務を具体的に書き出しておく

更新の直前に言い出すと、派遣先との料金の話し合いが間に合いません。契約期間が3か月なら、期間の半ばに一度相談しておくと動きやすくなります。

「100円上げてほしい」はどのくらいの額か

上げ幅を伝えるときは、月や年でいくらになるかも見ておくと話しやすくなります。1日7.5時間・月20日働く場合、時給100円の差は月15,000円、年180,000円です(当サイト試算)。

派遣会社は、上げた分を派遣先への料金に乗せる交渉をすることになります。金額だけでなく、その額にした理由を一緒に伝えてください。

時給交渉の言い方とメール例文

時給交渉は、事実→希望→相談の順で伝えます。最初から「上げてください」と言い切るより、決め方を確かめる形で入るほうが、角が立ちにくい言い方です。

例文1:就業前に他社の時給を伝える

件名:○○社の就業条件についてのご相談(氏名)
○○様 お世話になっております。△△です。 ご紹介いただいた○○社の一般事務のお仕事について、時給のご相談です。 同じ地域・同じ職種で、時給1,650円の求人をほかでも拝見しました。 ○○社で働きたい気持ちは変わりません。時給を1,650円に近づけられるか、先方とご相談いただくことはできますでしょうか。 難しい場合は、その理由も伺えると助かります。

例文2:契約更新の前に経験を根拠にする

件名:次回契約の条件についてのご相談(氏名)
○○様 いつもお世話になっております。△△です。 ○月末の契約更新にあたり、時給のご相談をさせてください。 就業から1年が経ち、当初の入力業務に加えて、請求書の発行と月次の集計も担当しています。 労使協定の賃金の決め方では、経験年数や業務の範囲はどのように反映されますか。 次回の契約で、時給を見直していただける余地があるか伺えますと幸いです。

例文3:業務が増えたときに口頭で切り出す

「最近、○○の業務もお任せいただくようになりました。契約のときにお聞きしていた仕事内容から増えているので、時給の見直しをご相談できないかと思っています。次の更新までに、派遣先さんに確認していただくことはできますか。」

言わないほうがいい言い方

時給交渉で避けたい言い方と言い換え

避けたい言い方理由言い換え
「いくらでもいいので上げてください」営業担当が派遣先に出す額を決められない「1,650円を希望します。理由は〜」
「上がらないなら辞めます」条件の話が、続けるかどうかの話に変わる「難しい場合の理由も教えてください」
「○○さんより安いのはおかしい」人の時給は比べる材料にしにくい「協定の賃金表では私はどの区分ですか」
派遣先の上司に直接頼む給料を払うのは派遣会社営業担当に伝え、派遣先の評価は担当から聞いてもらう

交渉しても時給が上がらない理由と次の手

時給が上がらない理由は、大きく分けて派遣先の予算、派遣会社の決め方、すでに下限を大きく上回っているのどれかです。どこで止まっているかで、次の手が変わります。

時給が上がらないときの分かれ道

  • 時給交渉をしたが上がらなかった
    • 派遣先が料金を上げない次の更新や4月の改定で、もう一度相談する時期を決めておく
    • 理由の説明がない待遇の決め方の説明を求める(派遣法31条の2第4項)
    • 一般賃金を下回っている協定どおりか確認を求める。納得できなければ都道府県労働局へ
    • 下限は十分に上回っているほかの派遣会社で同じ職種の時給を比べる

図:上がらない理由によって、次に取る手が変わる(労働者派遣法と厚生労働省 令和8年度の局長通達をもとに作成)。

派遣先の予算で止まっている

派遣会社が時給を上げるには、多くの場合、派遣先との料金の交渉が要ります。派遣先には、派遣会社が協定を守れるよう、料金の額に配慮する義務があります(派遣法26条11項)。

ただ、配慮の義務は、値上げをそのまま受け入れる義務とは別です。断られたときは、次に相談できる時期(更新や4月)を営業担当と決めておくと、話が流れずに済みます。

理由を聞いても答えがない

派遣社員が求めれば、派遣会社は待遇を決めるときに考えた事項を説明する義務があります(派遣法31条の2第4項)。説明を求めたことを理由に、解雇などの不利な扱いをすることも禁じられています(同第5項)。

令和8年度の通達も、一般賃金を守ったうえで、物価や賃金の動きを踏まえて賃金を決めるよう労使で十分に話し合うことを求めています。「上げられない」の一言で終わったら、「協定ではどう決めていますか」と聞き直してください。

下限を十分に上回っているなら会社を比べる

自分の時給が一般賃金を大きく上回っているなら、今の会社で上げる余地は小さいかもしれません。その場合は、同じ職種・同じ地域の時給をほかの派遣会社で比べるのが近道です。

派遣会社は複数に登録できます。進め方は派遣会社の複数登録は何社まで?に、大手3社の違いはテンプスタッフ・リクルートスタッフィング・スタッフサービス比較にまとめました。会社ごとのマージン率は派遣会社のマージン率一覧で事業所単位に見られます。

よくある質問

Q1:派遣で時給交渉はしてもいいのですか?

できます。相手は雇い主の派遣会社なので、営業担当に伝えてください。労使協定方式なら、経験や能力が上がれば賃金が改善される決め方を協定に入れる決まりがあり、それが交渉の根拠になります。

Q2:時給交渉はいつするのがいいですか?

就業前、働き始めて半年〜1年、契約更新の1か月ほど前、4月の協定改定の前が頼みやすい時期です。更新の直前だと派遣先との料金の話し合いが間に合わないので、少し早めに相談してください。

Q3:時給交渉をしたら契約を更新されなくなりますか?

交渉したことだけで更新が決まるわけではありません。待遇の決め方の説明を求めたことを理由に、不利な扱いをすることは法律で禁じられています(派遣法31条の2第5項)。事実と理由を添えて、相談の形で伝えるのが安全です。

Q4:就業前に時給交渉はできますか?

できます。契約を結ぶ前のほうが、条件はむしろ動かしやすい時期です。同じ地域・同じ職種で時給の高い求人があれば、その額を根拠として伝えてください。

Q5:時給交渉の相場は何円くらいですか?

上げ幅の公的な統計はありません。目安にしやすいのは、労使協定の一般賃金で経験年数の区分が上がったときの差です。令和8年度の別添1の総合事務員なら、経験0年と1年の差は全国で202円です。

Q6:自分の時給が一般賃金より低かったらどうすればいいですか?

まず、協定が使っている統計・職種・地域で計算し直してください。それでも下回っているなら、派遣会社に協定どおりかの確認と説明を求めます。納得できないときの相談先は、都道府県労働局です。

まとめ

この記事のまとめ

  • 時給交渉の相手は派遣会社の営業担当
  • 労使協定方式なら、時給は一般賃金と同等以上にする決まり
  • 一般賃金は職種別の基準値×能力・経験調整指数×地域指数で計算できる
  • 同じ事務職でも、協定が使う統計で下限は数百円変わる
  • 頼みどきは就業前・半年〜1年・更新の1か月前・4月の改定前
  • 上がらないときは説明を求める→他社の時給と比べる

時給交渉で一番役に立つのは、自分の時給がどの決め方で出ているかを知っていることです。まずは労使協定を開いて、自分の職種に使われている統計と職種名を確かめてみてください。それが分かれば、この記事の表と同じ計算で、話の出発点になる数字が出せます。

次の更新の前に、同じ職種・同じ地域でほかの求人の時給を見ておくと、交渉の根拠にも、会社を替えるかどうかの判断にも使えます。

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免責事項

※本記事は、厚生労働省の令和8年度・令和9年度の一般賃金に関する局長通達と別添1〜3、e-Gov法令検索の労働者派遣法(いずれも2026年11月3日確認)をもとにした一般的な整理です。表の一般賃金と金額の試算は当サイトの計算で、実際の時給の下限は派遣会社の労使協定で使う統計・職種・経験の区分・地域によって異なります。例文は一例で、時給が上がることを保証するものではありません。ご自身の賃金の扱いは派遣会社にご確認ください。個別のトラブルは、都道府県労働局の窓口にご相談ください。

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この記事を書いた人

Sakamotoです。このサイトで派遣会社の選び方と制度をまとめています。

記事の土台は、各社の公式サイトや公開求人などの公開情報です。そこへ厚生労働省の統計や制度の資料を突き合わせ、数字と決まりごとを確かめてから書いています。

派遣会社選びでよく迷うのは「結局どこに登録すればいいか」だと思います。答えは職種と働き方で変わるので、比べる基準から順に整理しました。

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