派遣の同一労働同一賃金は2020年4月施行で、派遣社員の賃金・賞与・交通費などの待遇は「労使協定方式」か「派遣先均等・均衡方式」で決まります。仕組みと確認方法を整理します。
この記事でわかること
- 派遣の同一労働同一賃金が2020年4月に何を変えたか
- 待遇を決める労使協定方式と派遣先均等・均衡方式の違い
- 賃金・賞与・退職金・交通費など6つの待遇項目で何がどう変わるか
- 自分の待遇がどちらの方式で決まっているかの見分け方
- 待遇に納得できないときの確認・相談の手順
結論を先に書きます
結論から言うと、今の派遣では、賃金や賞与・交通費などの待遇に「不合理な差」を設けてはいけないというのが同一労働同一賃金のルールです。2020年4月に施行され、中小企業も含めて全面適用されています。
決め方は「労使協定方式」と「派遣先均等・均衡方式」の2つ。どちらが使われているかで、あなたの待遇の基準が変わります。実際には9割近くの派遣会社が労使協定方式を採用しています。
- 2020年4月施行。派遣も不合理な待遇差の解消が義務に
- 決め方は労使協定方式(多数派)と派遣先均等・均衡方式の2択
- 対象は賃金だけでなく賞与・手当・福利厚生・教育訓練まで幅広い
- どちらの方式かは就業条件明示書と労働条件通知書で確認できる
「派遣だから待遇が低くて当たり前」という前提は、今は当てはまりません。就業前に自分の待遇の決まり方を知っておくと、条件の良い派遣先を選びやすくなります。
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派遣の同一労働同一賃金とは|2020年4月に何が変わったか
まず全体像です。同一労働同一賃金は、正社員と派遣社員などの間にある「不合理な待遇差」をなくすための仕組みで、2020年4月1日に施行されました。
背景にあるのは、働き方改革関連法です。同じ仕事・同じ責任なら、雇用形態が違うだけで待遇に差をつけてはならない、という考え方が法律に落とし込まれました。派遣社員も、パートや有期契約の人と並んでこのルールの対象です。
かつては「派遣の時給には交通費も込み」「賞与や退職金は正社員だけのもの」という説明が一般的でした。しかし現在は、賃金・賞与・各種手当・福利厚生・教育訓練まで、待遇の項目ごとに差の合理性が問われます。根拠は厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」で確認できます。
| 時期 | 派遣の待遇の考え方 |
|---|---|
| 2020年3月以前 | 時給に諸手当を含めがち・賞与や退職金は対象外が多い |
| 2020年4月以降 | 待遇の項目ごとに不合理な差を禁止(中小含め全面適用) |
ポイントは、「差をつけてはいけない」ではなく「不合理な差はいけない」という点です。仕事内容や責任に応じた合理的な差は認められます。だからこそ、自分の待遇がどう決まっているかを知る意味があります。
もう一つ大切なのが「説明を求める権利」です。派遣社員から求めがあれば、派遣会社は正社員との待遇差の内容と理由を説明する義務を負います。しくみを知っていれば、就業前でも就業後でも根拠をもって確認できます。対象は登録型派遣・無期雇用派遣・紹介予定派遣を問わず、派遣で働くすべての人です。
派遣の待遇を決める2つの方式
次に決め方です。結論として、派遣会社は「労使協定方式」か「派遣先均等・均衡方式」のどちらかを選んで待遇を決めています。どちらかで、比較の基準そのものが変わります。
- 労使協定方式(9割近くの派遣会社が採用)
- 派遣先均等・均衡方式
労使協定方式(多数派)
多くの派遣会社が選んでいるのが労使協定方式です。派遣元(派遣会社)が労働組合または過半数代表者と協定を結び、同じ地域・同じ職種の一般労働者の平均賃金と同等以上になるよう待遇を決めます。
基準になる一般賃金の水準は、厚生労働省が職業別・地域別に毎年公表します。「基準値(0年)× 能力・経験調整指数 × 地域指数」で算定され、経験年数や勤務地に応じて金額が変わる仕組みです。この水準は毎年改定されるため、年度が変わると基準額も動きます。
派遣先が変わっても賃金の基準がぶれにくく、長期的なキャリア形成に配慮しやすいのが特徴になります。なお労使協定方式では、経験や能力の向上に応じて賃金が上がる昇給の仕組みを設けることが必須とされています。同じ会社で経験を積めば時給が上がる設計になっているか、協定の賃金テーブルで確認しておくと安心です。
派遣先均等・均衡方式
もう一方が派遣先均等・均衡方式です。派遣先の正社員(通常の労働者)と比べて、基本給・賞与・手当・福利厚生などすべての待遇について不合理な差を設けないよう決めます。
派遣先の制度がそのまま基準になるため、同じ仕事でも派遣先によって待遇差が出やすいのが特徴です。比較対象の選び方には厚労省が示す優先順位があり、派遣先は待遇情報を派遣会社へ多く提供する必要があります。
2方式の違い(早見表)
| 比較軸 | 労使協定方式 | 派遣先均等・均衡方式 |
|---|---|---|
| 賃金の基準 | 同種業務の一般労働者の平均賃金 | 派遣先の正社員の待遇 |
| 採用している会社 | 9割近く(多数派) | 少数 |
| 派遣先が変わったとき | 基準がぶれにくい | 派遣先ごとに変わりやすい |
| 教育訓練・福利厚生施設 | 派遣先と均等・均衡(共通) | 派遣先と均等・均衡(共通) |
どちらの方式でも、業務に必要な教育訓練と、食堂・休憩室・更衣室などの福利厚生施設の利用は派遣先の正社員と同じにしなければなりません。ここは共通ルールです。詳しくは厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について」を確認してください。
待遇項目マップ|6項目で何がどう変わるか
同一労働同一賃金は「賃金」だけの話ではありません。結論として、賃金・賞与・退職金・通勤手当・福利厚生・教育訓練の6項目それぞれに効きます。派遣社員の視点で一覧にすると、変化がつかみやすくなります。
派遣の待遇項目マップ(労働者視点)
| 待遇項目 | 同一労働同一賃金でどう効くか |
|---|---|
| 賃金(基本給・時給) | 労使協定方式は一般賃金水準以上、均等・均衡方式は派遣先正社員と均衡 |
| 賞与(ボーナス) | 賃金の一部として算定・反映される(時給への上乗せや別途支給) |
| 退職金 | 一般賃金水準に退職金相当分が含まれる/別途支給・前払いの形もある |
| 通勤手当(交通費) | 一律「なし」は原則不可。実費支給か賃金への反映が原則 |
| 福利厚生施設 | 食堂・休憩室・更衣室は派遣先の正社員と同じ利用が必要(両方式共通) |
| 教育訓練 | 業務に必要な訓練は派遣先の正社員と同じ機会が必要(両方式共通) |
とくに賞与・退職金・通勤手当は、以前は「派遣にはない」と思われがちでした。今は労使協定方式なら一般賃金水準の中にこれらの相当分が組み込まれ、時給に反映されるか別途支給される形になっています。
退職金の受け取り方は、大きく3つに分かれます。①退職時にまとめて支給、②毎月の賃金に上乗せ(前払い)、③中小企業退職金共済などの制度を利用、のいずれかです。②の前払い型だと、退職金という名目のお金が毎月の時給に溶け込んでいるため、「退職金がない」と誤解しがちです。自分の賃金にどの形で退職金相当が含まれるかは、労働条件通知書で確認しておきましょう。
賞与についても同様で、業績連動で別途支給される会社もあれば、時給に賞与相当を織り込む会社もあります。名目より「年間でいくら受け取れるか」で比較するのが実務的です。
一方で、支給の「形」は会社ごとに違います。時給に含める会社もあれば、賞与や交通費を別建てで出す会社もあります。金額そのものより、どの形で受け取っているかを明示書で確認することが大切です。交通費の具体的な支給パターンは派遣の時給相場とあわせて見ておくと比較しやすくなります。
自分の待遇がどちらの方式で決まっているか見分ける
ここが多くの人のつまずきどころです。結論として、方式は求人票では分からないことが多く、就業条件明示書と労働条件通知書で確認するのが確実です。
派遣で働き始めるとき、派遣会社は「就業条件明示書」「労働条件通知書(兼 雇用契約書)」を交付します。ここに待遇の決め方が記載されます。次のポイントを見てください。
- 就業条件明示書に「労使協定方式」「派遣先均等・均衡方式」の記載があるか確認する
- 労使協定方式なら、対象となる労使協定の名称・有効期間が書かれているか見る
- 賃金の内訳(基本給・賞与相当・通勤手当)がどう区分されているか確認する
- 不明なら、面談で担当コーディネーターに「どちらの方式ですか」と直接聞く
見分け方のチェックポイント
| 見る書類 | 確認する項目 |
|---|---|
| 求人票・募集要項 | 時給・交通費の表記。方式までは書かれないことが多い |
| 就業条件明示書 | 待遇決定方式(労使協定/均等・均衡)の明記 |
| 労働条件通知書 | 賃金の内訳・賞与や手当の有無・昇給の仕組み |
労使協定方式の場合、多くの派遣会社は労使協定の内容を自社サイトで公開しています。協定の対象職種・地域・賃金テーブルを見れば、自分の時給が水準を満たしているか確認できます。遠慮なく担当者に確認しても、失礼にはあたりません。
方式や待遇を面談でしっかり確認できるかは、派遣会社の対応力しだい。求人数が多く説明が丁寧な会社を選ぶのが安心です。
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待遇に不合理な差があると感じたときの確認・相談手順
万一「待遇に納得できない」と感じたら、手順を踏めば確認・相談ができます。結論として、まず派遣会社に説明を求め、それでも解決しなければ都道府県労働局に相談するのが基本の流れです。
同一労働同一賃金では、派遣社員から求めがあれば、派遣会社は待遇差の内容と理由を説明する義務があります。感情的に不満をぶつけるより、順番に確認したほうが早く解決します。
- 就業条件明示書・労働条件通知書で自分の待遇の決まり方を確認する
- 派遣元責任者(担当コーディネーター)に、待遇差の内容と理由の説明を求める
- 労使協定方式なら、公開されている労使協定・賃金テーブルと自分の時給を照合する
- 説明に納得できなければ、都道府県労働局の需給調整事業部門に相談する
- 労働局の総合労働相談コーナーや特別相談窓口を利用する(無料)
説明を求めたことを理由に、派遣会社が不利益な扱い(契約打ち切りなど)をすることは法律で禁じられています。安心して確認して大丈夫です。
都道府県労働局は、労働相談や説明会、特別相談窓口を設けています。制度の解釈で迷ったら、公的な窓口に確認するのが確実です。税や社会保険にかかわる部分は、派遣の有給・社会保険や扶養内で働く派遣の注意点、複数社で働く場合は派遣の確定申告もあわせて確認しておくと安心です。
待遇の説明が丁寧で、相談しやすい担当者がいる会社を選ぶことが、納得して働く一番の近道です。まずは求人数の多い会社に登録して比べてみましょう。
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よくある質問
Q1:派遣でも賞与や退職金は出ますか?
出る形になっています。労使協定方式では、一般賃金水準に賞与・退職金の相当分が組み込まれ、時給への反映や別途支給として受け取ります。派遣先均等・均衡方式では、派遣先の正社員に賞与・退職金があれば均衡が求められます。支給の形は会社ごとに違うため、労働条件通知書で確認しましょう。
Q2:労使協定方式と派遣先均等・均衡方式、どちらが得ですか?
一概には言えません。労使協定方式は地域・職種の一般賃金水準が基準で、派遣先が変わっても安定しやすいのが特徴です。派遣先均等・均衡方式は待遇の良い派遣先なら有利になり得ますが、派遣先ごとに差が出ます。9割近くの派遣会社は労使協定方式を採用しています。
Q3:自分がどちらの方式か分かりません。どこで確認できますか?
就業条件明示書と労働条件通知書に記載されます。求人票では分からないことが多いため、契約時の書類を確認してください。不明な場合は担当コーディネーターに直接聞くのが確実です。労使協定方式なら、派遣会社が公開する労使協定で賃金テーブルも確認できます。
Q4:中小の派遣会社にも適用されますか?
適用されます。同一労働同一賃金は2020年4月1日から、企業規模を問わず全面的に適用されています。「小さい会社だから対象外」ということはありません。
Q5:待遇に納得できないときは、どこに相談すればいいですか?
まず派遣会社(派遣元責任者)に待遇差の内容と理由の説明を求めます。派遣社員から求めがあれば、派遣会社は説明する義務があります。それでも解決しなければ、都道府県労働局の相談窓口(総合労働相談コーナー等)を無料で利用できます。相談したことを理由に不利益な扱いを受けることは法律で禁止されています。
まとめ:待遇は「決め方」を知れば選び方が変わる
派遣の同一労働同一賃金について整理します。
- 2020年4月施行。派遣も不合理な待遇差の解消が義務(中小含め全面適用)
- 決め方は労使協定方式(9割近く)と派遣先均等・均衡方式の2つ
- 対象は賃金・賞与・退職金・交通費・福利厚生・教育訓練と幅広い
- 方式は就業条件明示書と労働条件通知書で確認する
- 納得できなければ派遣会社への説明要求→都道府県労働局の順で相談
派遣の待遇は「高いか安いか」だけでなく、「どの方式で、どの形で受け取っているか」を知ることが大切です。決め方を理解しておけば、求人を比べるときの目線が変わり、納得して働ける派遣先を選びやすくなります。
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免責事項
※本記事は派遣の同一労働同一賃金に関する公開情報をもとにした整理です。制度の適用や具体的な待遇の判定は個別の状況で異なります。最新の制度や自身の待遇については、各派遣会社・厚生労働省・都道府県労働局の情報をご確認のうえご判断ください。
